
「エンジンがかかりにくい」「アイドリング時の振動が増えた」「加速しない」「黒煙が増えた」といった症状で、インジェクターの故障を疑っている方もいるはずです。
インジェクターが故障すると、始動時・アイドリング時・走行中・排気の状態などに、気になる症状が現れます。
放置すると、燃費が悪くなるほか、DPF(排気中のススを集めるフィルター)のススを燃やす作業(再生)が増えるなど、ほかの部分にも影響が出ることがあります。
トラック専門のDPF出張クリーニングを行うコウゴクDPFクリーニング(関西・四国・中国地方対応)が、症状の見分け方から対処までを解説する記事です。
| この記事を書いた人 コウゴクDPFクリーニング 代表 兒玉 龍也 関西・四国・中国地方で、トラック専門のDPF出張洗浄を行っています。 DPFマフラーの洗浄やトラックの吸排気まわりのお困りごとについて、現場で寄せられる声をもとにわかりやすく解説しています。 |
【この記事でわかること】
- インジェクターが故障すると、始動しにくい・加速が鈍い・黒煙が増えるなどの症状が出る
- 症状の主な原因は汚れの蓄積や経年劣化、電気系統の不具合などで、診断で明らかにできる
- 原因に合わせて、インジェクターの洗浄や交換、DPFの洗浄などで対処できる
※DPFという呼び方はメーカーによって異なり、DPD(いすゞ)・DPR(日野)と呼ぶことがありますが、本記事ではDPFと総称します。
インジェクターの役割と流れ
インジェクターは、軽油を細かい霧にして、燃焼室(シリンダー)へ直接噴射する部品です。
軽油が霧になると空気と混ざりやすくなり、燃え方が良くなる仕組みです。
コモンレール式のトラックでは、燃料は次の順に流れます。

コモンレールは、高圧の燃料をためる部品です。噴射は電子制御で管理されており、乱れると軽油をうまく燃やせなくなります。
インジェクターが故障したときの症状
インジェクターの故障で症状が出る場面は、始動・アイドリング・走行中・排気の4つです。
| 症状 | 出やすい場面 | 考えられる状態 | 診断の優先度 |
| エンジンがかからない・かかりにくい | 始動時 | 軽油が必要な量だけ噴射されない | 高め |
| 加速が鈍い・力が出ない | 走行中 | 軽油の噴射量の不足 | 高め |
| エンジン警告灯が点灯する | 走行中 | 噴射量や電気系統の異常など | 高め |
| アイドリングが不安定になる | アイドリング時 | 噴射のばらつき | 中程度 |
| 振動・異音が増える | アイドリング時・走行中 | 軽油が均一に燃えない | 中程度 |
| 軽油の減りが早くなる(燃費の悪化) | 走行中 | 軽油がうまく燃えず、消費が増える | 中程度 |
| 黒煙が増える | 排気 | 燃焼が不完全で、ススが増える | 中程度 |
| 白煙が増える | 排気 | 燃料が十分に燃えない(冷却水・オイルが原因の場合もある) | 中程度 |
| DPFの再生が増えることがある | 排気 | ススが増え、DPFの負担が増える | 中程度 |
当てはまる症状が続くときは、インジェクターを含めて原因を調べる診断を受けましょう。
始動時の症状
インジェクターが詰まると、エンジンがかかりにくくなります。
軽油が必要な量だけ噴射されず、燃焼が始まりにくいためです。
始動時に気づきやすい症状は、以下のとおりです。
- セルは回るが、エンジンがかからない状態
- 何度もかけ直さないとかからない状態
かけ直しの回数が増えてきたときは、症状が進んでいる可能性があります。
アイドリング時の症状
インジェクターが詰まると、アイドリングが不安定になり、振動や異音も出ます。
噴射の量やタイミングがずれて、軽油が均一に燃えないためです。
アイドリング時に気づきやすい症状は、以下のとおりです。
- アイドリング回転数の上下の揺れ
- 車体の振動の増加
- 普段と違うエンジン音
アイドリング中の揺れや異音は、運行の前後に気づきやすい症状です。
走行中の症状
走行中は、アクセルを踏んでも加速が鈍く、力が出にくくなります。
燃料が必要な量だけ噴射されないと、エンジンの出力が落ちるためです。
同じ距離を走るのに軽油が多く必要になって燃費が悪くなったり、エンジン警告灯が点灯したり、走行中にエンストしたりすることもあります。
排気とDPFの症状
インジェクターに異常があると、黒煙や白煙が目立つことがあります。
噴射量が多すぎたり、噴霧の状態が悪くなったりして燃焼が不完全になることが、黒煙(スス)が増える原因の一つです。
また、燃料が十分に燃えない状態では、白っぽい排気が出る場合もあります。
ただし、白煙は冷却水やエンジンオイルが原因の場合もあるため、排煙の色だけでインジェクター故障とは断定できません。
ススが増えると、DPFの負担が増え、再生が増えたり、再生に時間がかかったり、DPFの警告灯が点灯したりすることもあります。
DPFの警告灯が点滅したときの対処は、DPFランプ点滅が消えない!段階別の原因と対処法で解説しています。手動再生の困りごとについては、DPD手動再生が終わらない原因と対処法もあわせてご覧ください。
インジェクターが故障する4つの原因

インジェクターが故障する主な原因は、汚れの蓄積・経年劣化と熱・燃料の質・電気系統の不具合の4つです。
症状がどの原因から出ているかで対処が変わるため、原因の見極めが必要です。
汚れの蓄積による詰まり
インジェクターの詰まりは、カーボンなどの汚れが噴射口や内部にたまることで起きます。
汚れがノズルの先端や内部の動く部分に付着すると、噴射量が減ったり、噴霧が偏ったりします。
代表的な汚れは、以下の3つです。
- カーボン:燃料の燃焼で出る炭素
- スラッジ:燃料やオイルの燃えかすがたまった泥状の堆積物
- ワニス:スラッジのもとになる、粘り気のある油膜状の汚れ
どの汚れも、少しずつたまって噴射口をふさいでいきます。
エンジンを止めたあとの余熱で、噴射口に残った燃料が固まり、汚れの原因になることがあります(ヒートソーク現象)。
経年劣化と熱による部品の傷み
使用年数や走行距離が増えると、ノズルの穴がすり減って噴霧の形が乱れ、熱による部品の傷みも進みます。
ノズルの穴を高圧の燃料が常に通るため、摩耗は避けられません。経年劣化と熱で起きやすい不具合は、以下のとおりです。
- ノズルの穴の摩耗による噴霧の乱れ
- 高温の環境による部品の劣化
ゴム製のシールが高温で硬くなると、すき間から燃料がにじみ出ることもあるとされています。
燃料の質と運転の仕方
燃料に不純物や水分が混じると、インジェクターの詰まりや傷みを早めます。
汚れがたまりやすい条件は、以下のとおりです。
- 水分や異物が混入した燃料
- 長期間保管されて劣化した燃料
- 車両の長期間の放置
長期間放置すると、汚れが固着してエンジンがかかりにくくなることがあります。
電気系統の不具合
コモンレール式のインジェクターは、ECU(制御装置)からの電気信号で制御される部品です。
方式にはソレノイド式やピエゾ式などがあり、配線・コネクター・インジェクター内部の電気系統に異常が起きると、正常に噴射できなくなることがあります。
電気系統で起きやすい不具合は、以下のとおりです。
- 配線・コネクターの断線・接触不良
- インジェクター内部の電気部品(ソレノイドやピエゾ素子)の不具合
電気系統の不具合は、症状が断続的に出ることがあり、診断機での確認が必要とされています。
インジェクター故障が疑われたときの対処

インジェクターの故障が疑われたときは、診断で原因を調べてから洗浄か交換かを選ぶ流れです。
走行を続けてよいかの目安
エンジン警告灯が点灯したときや、出力が大きく落ちたときは、走行を続けず、整備工場や販売店に連絡しましょう。
走行中にエンジンが止まる危険があるとされているためです。
症状が軽い場合でも、放置すると悪化することがあるため、早めに診断を受けてください。
診断機による原因の切り分け
インジェクターの故障は、症状だけでは断定できないため、診断機で原因を調べます。
診断機は、車のコンピューター(ECU)につないで、故障コードなどを読み取る機械です。整備工場やディーラーが使っています。
診断の流れは、以下のとおりです。
- 症状が出る場面と頻度を確認する
- 診断機で故障コードを読み取る
- 噴射量の補正値など、インジェクターの状態を確認する
- 配線・燃料フィルター・DPFなど、ほかの原因を点検する
- 必要に応じて、インジェクターを取り外して噴霧の状態を試験する
噴射量補正値は、ECUが各気筒の燃料噴射量をどの程度補正しているかを示す数値で、診断材料の一つです。数値だけでインジェクター単体の故障を確定できるとは限りません。
故障コード、燃圧、各気筒の状態、燃料系統などをあわせて確認します。
インジェクター以外でも、似た症状が出る部品があります。主な例は、以下のとおりです。
| 疑う部品 | 似た症状 | 診断機で確認する項目 |
| 燃料フィルター | 出力低下・加速の鈍さ・始動不良 | コモンレールの圧力(燃圧) |
| サプライポンプ | 始動不良・出力低下・警告灯の点灯 | 燃圧・故障コード |
| DPF | 出力の低下・警告灯の点灯・再生の長期化 | 差圧・再生の状況 |
診断では、ほかの部品も含めて原因を切り分けます。診断の結果によって、洗浄や交換などの対処が変わります。
コウゴクDPFクリーニングでは、インジェクターの不調が気になる場合に、診断機で状態を確認したうえで、洗浄などの対処をご提案できます。まずはお気軽にご相談ください。
インジェクターの洗浄・交換と費用
汚れが原因なら洗浄、摩耗や破損が原因なら交換と考えるとよいでしょう。洗浄で改善しない場合も、交換が必要になります。
電気系統が原因の場合は、洗浄では改善せず、配線・コネクター・インジェクター本体などの点検・修理または交換が必要になることが多いです。
方法ごとの違いは、以下のとおりです。
| 方法 | 内容 | 向いているケース | 車を使えない期間の目安 |
| 燃料添加剤による洗浄 | 給油時に洗浄剤を入れる | 軽い汚れ(効果は限定的) | なし |
| 専用機による洗浄 | 専用の装置で汚れを落とす | 汚れによる詰まり | 数時間(出張洗浄の場合) |
| 取り外しての洗浄 | インジェクターを外し、超音波などで洗う | 汚れによる詰まり | 数日~1週間程度、トラックが稼働できない場合がある |
| 交換 | 新品、またはリビルト品(使用済みを洗浄・検査して再生した部品)に取り替える | 摩耗・破損、洗浄で改善しない場合 | 整備工場での作業が必要で、日数は車種や工場による |
費用は、車格・本数・洗浄か交換かによって変わります。
以下は、公開されている料金の一例を紹介します。
| 対応 | 費用の例 | 条件 |
| 洗浄(4t〜大型) | 1台分で8万円程度~ | 洗浄範囲は業者によって異なる。出張費は別の場合あり |
| 交換(新品) | 大型トラック1台分の部品で70万円程度〜 | 工賃等は別途確認。車種による差が大きい |
| 交換(リビルト品) | 新品より安い | 新品の半額以下の例もある |
費用が変わる主な条件は、以下のとおりです。
- 車格と、インジェクターの本数
- 洗浄か交換か
- 新品かリビルト品か
- 診断料・脱着工賃・出張費の有無
見積もりを取るときは、各条件が料金に含まれているかを確認しましょう。
DPF・吸気側の出張洗浄
インジェクターの噴射が乱れると、不完全燃焼でススが増え、DPFにもススがたまりやすくなることがあります。
インジェクターの洗浄や交換の際は、DPFや吸気側(インテークマニホールド)の汚れも確認しておきましょう。
原因となる部分ごとに、洗浄や交換の対処が必要になります。
コウゴクDPFクリーニングは、診断機による診断から4箇所の洗浄まで、出張で対応します。
【4箇所】
- DPFマフラー
- 過給機(ターボ)
- インテークマニホールド
- 燃料パイプライン
燃料パイプラインの洗浄や添加剤の投入で、インジェクター部分にもアプローチするため、インジェクターの汚れ落としにもつながります。
※弊社では、インジェクターを単体で取り外して洗う作業は行っていません。
非分解洗浄のため、作業は数時間で終わり、トラックの稼働を長く止めずに済む点が利点です。
DPF洗浄の料金の考え方は、トラック・大型車のDPF洗浄料金はいくら?交換との比較や業者の選び方をご覧ください。
インジェクターを長持ちさせる心がけと寿命

燃料やフィルターに気を配ると、インジェクターは故障しにくくなります。
長持ちさせるよう、以下を心がけていきましょう。
- 品質の確かな燃料の給油
- 燃料フィルターの定期的な交換
- 長期間の放置を避けた定期的な走行
- 小さな変化への注意と、早めの診断・洗浄
ただし、部品である以上、劣化は避けられません。
インジェクターには、「○万kmで必ず交換」といえる一律の寿命はありません。
実際の劣化の進み方は、車種・走行距離・燃料の状態・使用環境などによって異なります。
走行距離が増えて、始動性の悪化や振動、出力低下、噴射量の補正値の異常などが見られたときは、診断を受けて状態を確認しましょう。
インジェクター故障の症状でよくある質問
インジェクターの交換は自分でできますか?
いいえ、自分での交換はおすすめできません。
高圧の燃料を扱う精密部品で、取り外しや取り付けにも専門的な技術が必要なためです。
さらに、車種によっては、診断機でインジェクター固有の補正コード(IDコード)をECUへ登録する作業が必要です。
登録しないと、出力不足やアイドリング不良などが出ることがあります。
インジェクターの点検は自分でできますか?
インジェクターの点検は、自分では難しいです。
診断機による噴射量の補正値の確認や、取り外しての噴霧の試験が必要になります。
自分でできるのは、症状の変化に気づくことまでです。気になる変化があれば、診断を受けるようにしましょう。
インジェクター故障の症状は早めの診断を
インジェクターの故障は、始動・アイドリング・走行中・排気の症状で気づくことが多いです。
ただ、症状だけでは原因を断定できません。
診断機を使って、インジェクター・電気系統・燃料フィルター・DPFなどを調べ、原因に合わせて洗浄や交換などで対処します。
DPFや吸気側の汚れが気になるときは、診断から洗浄まで出張で対応できるコウゴクDPFクリーニングへご相談ください。


